19.思いを遂げる

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 とにもかくにも新選組は、名実共に武士になった。そして新選組の中に限れば、さくらが女であるということはいよいよ周知の事実となっていた。それまでも隊内で知っている者は少なくなかったが、「慶喜が認めたのだからもういいだろう」という意識も相まってか、隊士らの口に立てられていた戸は次々と開いていった。勇や歳三も、もう殊更禁句にしようとはしなかった。  だがこのひと月、めでたいことばかりではなかった。新選組は、少なからぬ隊士を失った。  まず、もともと伊東と共に上洛し入隊していた佐野七五三之助(さのしめのすけ)をはじめとする四名が、会津藩本陣で腹を切り、果てた。  御陵衛士に潜入している斎藤からの文によれば、この度の幕臣取立に対し「尊王攘夷の志に反する」として、新選組から御陵衛士への移動を申し出ていたそうだ。  しかし、互いの隊を行き来することは厳禁と最初に定められている。伊東は四人の嘆願を却下した。  行き場を失った彼らだったが、会津側の執り成しでもって新選組に復帰するというところまでなんとか話が進んだ。しかし本人たちはこれを不服として、自ら腹を切ったという顛末だ。
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