🌸花巡り 花惑い そして…花灯り🌸竹久夢二、伊藤晴雨を虜にしたモデル「お葉」の物語

4 うそつき少女

「お前はどうして
しょうもない嘘ばっかりつくんだよ！
誰が聞いたって嘘とわかるウソを！」

おはなは
白粉のはげた額に青筋を立てて
正座した少女に詰め寄った。

「おい、もう止（よ）せよ」

白秋はおはなを止めながら
目に涙をためて下を向いたままの「金太郎」に
ちらりと目をやった。

「旦那様に迷惑のかかるような嘘を
どうしてつけるんだいって
訊いてるんだよ！」

少女は
鋭い目でおはなを見上げると
いきなり突っ伏して、わっと泣きだした。

少女は、
おはなが目をかけている下地っ子「金太郎」…

他所の置屋の姐さんに
「おかあさん（おはな）の旦那さん（白秋）に
手籠めにされた」
と話した。
そんなことがあろうはずがないと思った姐さんが
おはなに注進して、知れたことだった。

その他にも
「自分は代々名の庄屋の娘で
人買いに攫われてきた」だの
「兄さんはアメリカの大学を出て
事業に成功し、アメリカに屋敷を建てた」だの
荒唐無稽な嘘をついていた。