二月の詩

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文面は途中のようだが 流れるような美しい文字がそこにあった …………………………… 立春も過ぎたといいますのに 寒さ未だ厳しく 貴方様におかれましては おかわりございませんか? ………………………………… 宛名がないからだろうか まるで自分に宛てられた手紙のように感じた 誰とも触れ合うことのない今の世の中で 遠回しにも気遣われるこの手紙に 少し暖かい気持ちになる 俺が来る前にこの辺りの席に座っていた誰かか あの窓の席に座っていた女性が落としたのだろうか 捨てることも憚られ じっとハガキを握りしめた 店員に渡しても これを落とした人は取りに来るのだろうか また新たに認めるはずだ ならば、オレが預かっても? いや。まるで変態じゃないか 誰が書いたのかもわからないハガキを なんでオレが? 次にあの女性に会ったら 聞いてみる…か? 下心全開だな。 淡い鶯色の和紙のハガキ 多分、大切な人に宛てたハガキだ 心の葛藤を続けていると 「あの…」 硬い声に呼ばれた
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