二月の詩

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意志の強そうな切長の黒い瞳に 眉で切りそろえられた重い前髪に 真っ直ぐ伸びた黒く長い髪 細身で背の高い オレを呼び止めた女性は 薄い鶯色の葉書をじっと見つめて言った 「それ、私のです」 あの綺麗な窓際の女性を期待していたオレは 多分思考回路が止まっていたのだろう 「それ、私のハガキなんです!」 顔を赤くし、捲し立てる黒髪の女に 気を取り戻し 「失礼 足下に落ちていたので…」と言いながら彼女に差し出すと 安堵したのかキツイ表情が一気に崩れクシャリと歪んだ それはあまりのギャップで 思わず見入ってしまう この子があの文章を? 「ありがとう」 彼女はペコリと頭を下げ 踵を返しパタパタと走っていった まぁ、こんなもんだよな。 「はぁ。。。帰ろ」 温室のような店内から一歩外に出ると 日差しはあるのに 風が冷たく 春はまだ遠い ふと、あのハガキを思い出す 俺の事を想ってくれる誰かが どこかに居るのなら 例え時候の挨拶文だろうと貰えるのなら嬉しいものだ 相手を思って書く手紙か。。。 俺にも届くだろうか
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