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「夢……」
何度も記憶を掘り下げる。薄い茶色の切れ長の瞳。どこか陰のある、彫りの深い顔立ち。優しくて、ゆっくりと語りかける甘い声。1つ上のはずの年齢。いくらでも空太君について思い出せるのに、あのとき彼が何を言っていたかだけがどうしても思い出せない。
「会いたい、な……」
すがるような思いだった。不登校気味のその時の環境から逃げ出したかっただけなのかもしれない。
そうだ。おばあちゃんの家の近くの高校に進めば、また空太君に会えるかもしれない。それに、あの場所には今の学校の子たちは誰も進学しそうにない。
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