1 私と彼の二度目の出会い

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 引っ越し作業の時になくした昔からつけていた手作りのビーズのヘアピン。どこへ消えたのかわからないけど、探せばきっと部屋の中に落ちてるのだろう。初心者だった子供の頃に作った思い入れのある作品だから、見つかればいいなと心から願っている。ふたつセットで作って、そのうちのひとつはもう手元にないから、せめてひとつはもっていたいのに、なんでなくすかなあ。ため息をつきたい気持ちになりながら私は笑顔を作る。 (空太君が褒めてくれた大切なヘアピンなのになぁ……)  最後の方の記憶が実は曖昧な空太君との思い出。それでもハッキリ思い出せるのは、私の当時のヘアピンを空太君は「似合ってるからいつもつけていて欲しい」と願うぐらい気に入っていたという記憶だ。当時は手作りの物を褒められて、嬉しくて嬉しくてたまらなかった。それから、私にとってあのヘアピンは宝物だったのに……。  どんな服を着ても、寝る前であっても。いつだって空太君に会うときはソレをつけていたっけ。懐かしいなぁ。本当はそれによく似たヘアピンを作るか迷ったけど、それはそれでなんだか微妙なのでやめたんだ……。
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