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「あの時、ヴィヨレの装備はパーティーの中で一番貧相なものだった。だから宝箱から出てきたビキニアーマーをルカは渡したんだ。お前は大切な戦力だから」
「!」
大切な戦力。そう言われて私は再び涙が溢れてしまった。分かっていた。だって、魔法使いのカスミに一番世話になっていたのは私だった。
私の村はとても貧乏な村だったから用意した装備は貧相なものだった。魔法強化した装備でも下の下だ。だけど、剣の腕だけでなんとかなっていたのだ。
もちろん目の前にいるイサークや勇者ルカには剣の腕は敵わないのは分かっている。カスミはいつも私の傷を最初に治してくれた。とても優しい魔法使いだった。そんな優しい魔法使いにルカが惹かれるのは当然だ。
分かっていた事を認めて、諦める気持ちの整理が出来た頃、涙も止まってきた。
「……ルカは私の初恋だったのよ」
背が高く女性にしてごつめの私だって乙女心はある。憧れる勇者だった。同時に心優しい魔法使いカスミも好きだ。
「ルカが初恋か……そうかいつも目で追っていたしな」
イサークが首の辺りを撫でながら溜め息をついた。
「私が目で追っていたってよく分かっていたわね」
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