01 私の名はヴィヨレ

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 噛みつく様なキス。ジュッと音を立てて吸い上げられたら、唇の間から肉厚な舌が入り込む。私の口内は先程泣いたせいで体温が上がっていたけれども、それよりもずっと体温が高いイサークだった。こじ開けられて私の舌を絡めて吸い上げる。 「ふっ……」  唇を合わせたまま角度を変え、漏れる声すらイサークの口内に吸い上げられる。少しだけ隙間が空くと顎の裏を舐め上げられて私は思わず足の指先に力が入った。  えっ、何? どうなってるの。何これ? キス?  キスをまともにした事がない私は、今自分に起こっている状態が飲み込めなかった。イサークのシャツを握りしめる。どのぐらいそうしていただろう。息が苦しくなった頃、イサークがゆっくりとはなれた。はなれても私のおでこに自分のそれつけて近い距離にいる。  そして、今まで聞いた事がない低くて甘い声で囁かれる。 「泣いた後の上気した顔も可愛いな」 「かっ、可愛いって?!」  そんな言葉は未だかつて誰にも言われた事がない。だから再び頭の上から声を上げる。色気のない私の大きな声に、イサークが人差し指を立てて私の唇を押さえた。 「静かにしろ」
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