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私が困った様な顔をしていると、イサークの表情が読み取れない顔が見えた。でも口角が少し上がっている。あれ? 頬が震えている──と言うか、にやけている?
「何がおかしいのよ。経験がないからって笑わないでよ」
失礼だと私が怒ると、イサークは慌てて自分の口を押さえ軽く咳払いをした。
「これは笑ったんじゃない。嬉しくなって思わずだ」
「嬉しい?」
変なイサーク。
私がわけが分からず首を傾げると、イサークは馬乗りを止めて私の隣に寝転んだ。それから片方の肘をついて私の頬をもう片方の手で撫でてくれた。
「俺が最初って事だろ? 俺もこの年で女の最初が嬉しいと感じるとは。気だけは若いって事か? そうか、初めてか……それは悪かったな。乱暴な事をして」
イサークは優しく笑って私の頬を撫で、髪の毛を一房持つ。初めて聞く優しいイサークの声に笑った。
「ふふふ。びっくりしたけどキスって凄いのね。ルカの事なんてもうすっ飛んだわ」
そうか『俺にしておけ』って言うのは『ルカの事を忘れてイサークを見ろ』って事なのね。私はようやくイサークの言葉を理解した。
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