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寡黙な男、イサーク。三十代前半のイサークは背が高く鍛え抜かれた体にはいくつもの傷があった。黒髪は耳が隠れる長さでバサバサに切られている。長めの前髪から覗く瞳は一重で鋭かった。恐ろしく腕の立つ剣士だ。全く剣筋が読めない上にとにかく動きが速い。力も強く簡単な魔法なら使う事が出来る。更に薬草などの知識もある。
過去はあまり話してくれないけれども、国に仕える暗殺者だったそうなの。ね? 根掘り葉掘りは聞くものじゃないわ。冒険者や旅人はそれぞれ事情があるのだから。
そのイサークに押し倒されているのは何故かって? 事の起こりは──そうね媚薬よ媚薬。
◇◆◇
「ヴィヨレ、馬鹿かお前は。酒場で酒を飲む時はグラスを必ず空にして席を立つのが常識だろう。媚薬が混入した酒を飲まされるところだったんだぞ」
私が座るベッドの前には屈強な男がいる。名前はイサーク。私はそのイサークに盛大な溜め息をついた後、お説教を受けていた。
「だって。今日は飲まないとやってられない気分だったのよ」
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