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私の暢気な態度にイサークは、こめかみの血管を太くした。声を大きくする事はないがイサークは臓物が冷え込む様な低い声で呟いた。
「……俺は国お抱えの暗殺者だったからな。薬物には詳しいんだ」
その時の知識を活かし、イサークは私にお説教をしているのだ。暗殺者だった事はあまりイサークは触れられたくない様だ。触れられたくないところに踏み込んだ私に腹が立ったのだろう。
だけど私もそんな事は百も承知だ。別に媚薬の件で「使った事あるんだぁ~ねぇねぇその時の具合はどうだったぁ~?」など酔っ払って、イサークの事をからかいたかったのではない。
「だって……」
怒るイサークの瞳を見つめる。一重の男らしい切れ長の眼だ。冒険の先々で、ときめく女性達がいた事は知っている。だけど、私は別の事で頭が一杯だった。口を開いたらこらえていた涙が溢れてきた。
「ヴィヨレ?!」
今までどんなに魔物と戦って怪我を負い、痛い目に遭っても泣く事は一度もなかった。そんな私にイサークが驚き慌て出す。
今日の私は心がボロボロになっているのよ。
「ぐすっ、ひっく。ううっ~」
私は両手で顔を覆って泣いた。
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