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衝撃的な言葉に、霧島葵はふらりと後退する。朝霧の言葉を信じたくないようだ。
まるで、あの時、霧島が朝霧に冷たい言葉を言った、あの時の報復のように見えた。
「け、けど! 紫は私を助けてくれた! それは事実でしょう?!」
「ええ、助けたよ。あなたの両親から依頼が来たからね。最高に不毛だと思ったけれど」
「紫、私はあなたのことがーー」
「ストップ。その先の言葉は言ってはいけないよ。それは規約違反だ」
朝霧は霧島の言葉を制した。
その先の言葉を言わせなかった。まるで、その先の言葉を聞くことを拒むかのように。
霧島の瞳に涙が溜まる。
「泣くことは別にいい。けれど、それをしたところで、現実は何も変わらない。私があなたにその感情を抱くことはないし、この先も一生ない。あなたの感情は理解したし、納得もしたけれど、それでも受け入れることはできない。それは、助けたあの日に話したはずだ。その先の言葉は言わない。それを条件にあなたを守る。そう約束したのを、あなたはもう忘れたのかい? まだ3日と経っていないけれど? そんなに物忘れが激しい子だったのかい?」
「それはそう、だけど……!」
「葵。何度も言わせないで。それ以上言ったら本当に怒るよ?」
冷たい視線に低い声。
朝霧は怒っている。
霧島はシュンと肩を窄め「分かった。ごめん」と謝った。
「いや、私の方こそ悪かった。少し言い方がキツくなってしまった。けれど、それが契約だ。約束を守らない場合はそれ相応の手段を取るから忘れないようにね」
その表情は柔らかく、もう怒ってはいないようだった。
勝手に話し始めて、何が何だか分からないが、あまり深く干渉しないほうがいいだろう。
いや、干渉しようにも、話の内容が分からなさすぎて困る。
まあ、2人の間に何かがあった、と思っておけばいいだろう。
「そうそう。話の途中だったね。まあ、結論から言ってしまうと、死にたくなかったら身の程を弁えろ、ってことだよ?」
微笑みを向けた朝霧は、霧島の耳元で囁く。
「死にたくなかったら、私を敵に回さないことだ。そしてこれは最後の忠告。ーーあまり調子に乗っているようなら、早い段階で君のことを潰すからね?」
分かったかい?
目だけでそれを訴えた。
霧島は震えながらそれに頷いた。
「ふふっ。理解力のある子は好きだよ」
笑った朝霧の顔が、悪魔のようだったなんて、口が裂けても言えない。
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