劇的な変化を求めたあの日

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 あの日、未来の私と霧島葵、矢吹琴子がどんちゃん騒ぎを起こしたあの日から、霧島の矢吹に対する態度が急変した。そしてそれと同時に、クラスメイトの態度も変わった。  あいつはやばい。  そんな雰囲気がクラス中を包み込む。  普段矢吹と友達でいた何人かは、あの日の騒動で離れていった。矢吹のそばにいるのは残った数人だけ。離れていった友達の中には霧島もいた。その行動には誰もが驚いていた。  霧島はあからさまに矢吹のことを避けた。  矢吹はその理由が分かっていないかのように、しつこく霧島のことを追い回した。それをすればするほど、霧島から避けられるということが、矢吹は分かっていないみたいだった。  矢吹の霧島に対する執着が凄いと思う。  何故そこまで一個人に飽きることなく執着できるのか。そこまで避けられたら流石に一度は距離を取るだろう。矢吹にはそれがなかった。  あの日から3日ほど経ったが、矢吹の霧島に対する執着は相変わらずだ。  あそこまでいくと、ただただ凄いと思う。辛くないのだろうか。あんなに避けられて、嫌がられて。  あれはまるでストーカーのようだった。  ストーカーの行動がグレードアップしたかのような行動を矢吹はしていた。  あれには、周りにいる友達も引いていた。  そのことに気付かないほど、矢吹の瞳には霧島しか映っていない。 「まあ、霧島には申し訳ないですけど、私はそれに感謝しているんです。霧島が標的になってくれたおかげで、悪口を言われる頻度も少なくなりましたし」 「おお、それは良かったね」 「ええ。けれど、霧島は災難でしょうね。授業中以外は矢吹に追いかけ回されるんですから。可哀想に思えてしまいますよ」 「まあ、矢吹は愛情を知らないで育ったからね。そうなっても仕方がないとは思うけれど」  朝霧は何か知っている。  そしてその話を、今から私にしようとしている。私の勘がそう言っている。  そしてその勘は的中した。 「親が学校に来る機会ってのがあるでしょ? 入学式だとか保護者会だとか卒業式だとか。その時に矢吹の両親って見たかい?」  突然の言葉に、私は首を傾げるしかなかった。
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