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意味深な言葉を放つ朝霧に、私は首を傾げることしかできない。
「未来が変わっていなければ、その相棒さんと出会うんですよね? それって仕事仲間、ということですか?」
「どういうことだい?」
口元は一切緩めず、目を少し細めて朝霧は聞き返した。分かりづらい表情だった。少し怒っているようにも見えて、何だか私は怖くなった。
「怒らせたならすみません。相棒という言葉を使うとき、少し嬉しそうに言うので、それ以上の関係なのかな、と思いまして」
汗を垂らしながら言う私に対し、朝霧は不意を突かれたような顔をした。
顔の近くに星のようなものが見えた気がする。
「それ以上の関係……か。やっぱり過去の私なんだねぇ。まさかそれを言われるとは」
くすりと笑った朝霧は、薄く唇を引いて言った。
「その相棒は、私の彼氏だよ」
少しだけ顔を赤くした朝霧に、私は新鮮さを感じた。
「へえ? 未来の私は彼氏までつくるのか!」
「うん、つくるよ。彼ね、とっても優しい人なんだ」
「いいな。私もこれから会えるのかな」
「会えるよ。未来が変わっていなければ」
「……うん」
まるで未来が変わってしまうかのような言い方だ。いや、実際にもう変わっているのだろう。
矢吹に対する霧島の態度とか、クラスメイトの反応だとか。変わってしまったことはたくさんある。言動一つで良い方向にも悪い方向にもなる。
それを今回のことで教わり、私は少し怖くなった。
けど……
「大人かぁ。なりたくないけどなりたいなぁ」
小さく呟いた私に、朝霧はただ笑みを浮かべていた。
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