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『あなたたち……誰?』
『あんたたち……誰だ?』
いや、それはこっちの台詞だ。
私は心の中で叫んでみる。
しかし、それを口に出す勇気が、残念ながら私にはなかった。
霧島という人物は、確認をするかのように、辺りを見回した。
「ここは……教室? それなら君たちはーー」
少しだけ悩んだ後、霧島という者は言った。
「ああ、これは失礼。授業の邪魔をしてしまったのですね。申し訳ありません。私の名は霧島葵。そして隣にいるのがーー」
「ーー矢吹琴子」
仏頂面をしながら答えた矢吹は、血を吐いて倒れている朝霧紫のお腹を、思い切り蹴り飛ばした。
「うぐっ……」
「なんだ? まだ意識あるんだ? 少しだけ気絶してなよ!」
傷だらけの朝霧のことを思い切り殴り、無理やり気絶させた。
さっきから思い切りやるのが好きな人だな。
周りが悲鳴を上げる中、冷静に判断している自分が少し怖くなった。
それにしても、霧島葵に矢吹琴子。そして朝霧紫。この3人と同姓同名の人間が、気持ちが悪いと思ってしまうが、このクラスにはいる。もしそれが確かなら、この人たちはーー
「こっちは朝霧紫。ったく、朝霧の血のせいで、床が汚れてんじゃん。今日の掃除当番の人は可哀想に。こんな汚れた女の血を、掃除しないといけないんだから」
くくく、と変な笑い方をした矢吹は、霧島に囁く。
「そんなことより、葵、良い演技だった。お疲れ様。賭けに勝ったのは私だ。これからずっと私のものだよ、分かっているよね?」
「……分かってるよ。だから約束通り、朝霧さんには何もしないで」
「分かっているよ。約束通り手は出さない。もちろん、例のことを聞いた後はね。じゃあ、葵。そろそろーー」
そこで矢吹は言葉を止めた。
しばらく霧島のことを見た後、矢吹は言った。
「先に行って待ってる。後で来なよ?」
霧島は黙って頷いた。
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