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「あなた、食べますか?」 「食べるよ。 食料庫に材料があるって教えたの、俺だよ…」 すかさず返すクリフだが、暖炉に陣取る少女は意外な返事を聞いたとばかりに眼をまるくした。 慌てて三つ目の器など探し出すから、 クリフとしては怒る気も失せて肩を落とす。 文句の代わりに、その少女へ尋ねた。 「なぁ、お嬢ちゃん……あんたもまた、 なんで丸呑みされてたんだ?  あと、この人は何の師匠だ?」 ちょうど食器棚を見つけた少女は、まるで待ってましたと言わんばかりにきらきらした眼で振り返った。 「その人は、私の狼退治と人生の師匠です!  最高に格好いいんですから!  私もそのうち、師匠のように狼を操って、 森の平和を守るのです!」 「守らなくてよろしい。私も守っていません」 フードを下ろしてテーブルに着いた師匠が 冷たくあしらう。 クリフの皿を持った少女が不満げに口を尖らせる。 しかしすぐ気を取り直して、 「今日は食糧を探しながら、 狼を操る練習をしていたんです。 そうしたら私の狼がこの家に反応して、 入ってみたらおばあさんがいて…… おばあさんだと思ったんですけど」 「さっきの俺の続きで、 食われちまったってわけだな……」 少女があまりに明るいので、 クリフも苦笑を拭えない。 それにしても、 彼女の話には気になる語がある。 また口を開こうとするクリフだが、 その前に別の口が動いた。 女性の凛とした声である。 「また、そんなことをしていたのですか。 あなたにそれを教えたのは、 私に何かあった時のための自衛策です。 いたずらに試したりするから、 災難に巻き込まれるのです」 厳しい顔に、空気がにわかに張りつめる。 だが少女は負けない。
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