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照れと苦笑が混じる頬を掻いて、
クリフが問いかける。
少女は一度、隣を見た。
茶のマントを着た女性は反応せず、
そのため再びクリフを向く。
「赤ずきんと言います」
「…それ、名前だったのか?」
「はい、今は赤ずきんです。
そして、この人は師匠です!」
「それは、俺が呼んでいいやつじゃないな…」
「構いませんよ。
この場でそう呼ばれるのは私だけのようですので」
食事を続ける女性が平然と口を挟む。
誰を指すのか明らかなら、
呼び名は何でもいいらしい。
クリフとしては、それだけで誰かを師匠と呼ぶのはためらわれるのだが、スプーンを上下させる様子に本名を名乗る気配はない。
仕方なく、
クリフは名乗られたとおりに呼びかけた。
「あー…よし、じゃあ師匠。それと、赤ずきん。
俺はしばらく留まって、
あの凶暴化した群れを散らしたい。
一緒に狼を狩ってくれ!」
テーブルの中央に出された右手を、
女性がちらりと見る。
ついでに、隣からじっと視線を注ぐ少女の顔も。
少しの沈黙が続き、
「──私達も北からあの群れを追ってきました。
まぁ、役に立つのでしたら」
澄んだ声の素っ気ない返事に、
しかしクリフはにっこり笑った。
「ああ、俺は役に立つぞ!
命を助けてもらったんだ、
その礼だってしてみせるさ!」
「わかりました。では、ここにいる間は」
その一言で、三人の関係性が決まった。
「……あれ、握手はしてくれないんだな……」
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