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師匠と呼ばれた少女が淡々と返す。
赤いフードから唐突に手を放すため、
幼い少女がびたんと木の床で潰れた。
それでも、
赤ずきんと呼ばれた少女は即座に師匠を仰ぐ。
「そんなことないです!
師匠は私を助けてくれるし、
戦い方も教えてくれるし、私は師匠ほど格好いい人を見たことがありません!」
曇りない尊敬の視線に、
師匠の少女は全く嬉しそうにしなかった。
細い眉が何かをこらえるようにしかめられ──
それも一瞬で、次には意を決した声が放たれる。
「わかりました。これを見なさい」
言うなりその場から一歩下がり、
マントの留め紐をするりとほどく。
茶の布地が肩から落ちれば、
そこにはすらりとした女性の肢体があった。
長袖のシャツとチョッキを着ているが、
襟元が艶めかしく胸元まで開いている。
プリーツを寄せたスカート丈は太股に留まり、
膝下のブーツまでは生足がそのまま覗いていた。
「どうです?
じき二十歳になる嫁入り前の娘が、
こんなあられもない服を着ているのです。
何を格好いいことがありますか。
あなたも私の背中を追っていると、
こういうイタい格好をする羽目になるのですよ」
──いや、自分で言うのか…?
胸の内で突っ込みつつも、クリフは紳士のたしなみとして目のやり場に困惑した。
どうやら二人とも、
狩人の存在を忘れ去っているようである。
おまけに、
「わぁーっ、相変わらず綺麗ですっ、師匠!
私もこんな美人さんに成長したいですっ!」
肝心の人物に全く効果がない。
赤いフードの少女は祈るように両手を組んで、
冬空の瞳に無邪気な光を踊らせている。
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