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それに実際、師匠の姿は「綺麗」だった。
村や町の娘達より多い露出も、
凛とした立ち姿のためか健康的な印象が勝る。
襟元にフリルのあしらわれた服も、
本人が何と言おうと少女のような顔立ちによく似合ってしまっていた。
一度は眼をそらしたクリフも、それに気付いてからはまじまじと見つめて感心する。
師匠の女性は、ただ少女だけを見て首を振った。
「着れば慣れると思うなら、大間違いです。
私はよく草で脚を切りますし、
人里へ降りれば恥ずかしいですし、これからの季節はマントがあっても身体が冷えます」
──じゃあ、なぜその格好を?
クリフの冷静な疑問は、やはり外に出ない。
「このスカートの下には、
何を隠そう毛糸のパンツを穿いているのですよ。
それも可愛さ度外視の分厚さです。
どうです、格好悪いでしょう」
「毛糸のパンツは厚みが命ですよ? 私は毛皮のパンツを穿いていたことだってあります」
「それはあなたの故郷が……」
「ちょっと、お二人さん」
たまらず口を挟んだクリフに、
初めて二人の注意が向く。
幼い少女が、クリフの存在に気付いてもいなかったように眼を見開く一方で、師匠の女性は何食わぬように顔の向きをすぐ戻した。
変わらぬすまし顔の中、
頬と耳だけが赤くなっている。
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