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カンテラがすました無表情を照らす。 冷淡ともとれる言葉に、しかしクリフは微笑んだ。 「……慰めてくれるんだな」 「ただの事実です」 つぶらな瞳がふいとそれる。 クリフは傍らの銃を取り上げた。 「中へ入ろう。今年の狼は変だ…… アデル婆さんの迎えでここまで襲われることは、 今までなかった」 丸太の扉に手を触れかけて、 そこでふと思い出す顔をする。 未だ墓前に佇む女性へ首を回した。 「そういや…閂があったのに、 あんた、どうやって入ってきたんだ?  あの狼に破らせたのか?  そもそも、あれは何だ?  なんであんたに従ってる?」 次々と出てきた問いにも、女性は表情を変えない。 カンテラを片手にクリフへ追いつくと、 先立って扉を押し開きながら、 「…この扉は、 左上を強く突くと閂が外れやすいのです」 「え、そうなのか? 知らなかった…」 「おかえりなさいっ、師匠!」 クリフの呟きを明るい声がかき消した。 同時に、部屋に充満した匂いが二人を包む。 火を入れた暖炉の前で、少女が鍋をかき混ぜながらにこにことこちらを向いている。 「私はどこへも出ていません。 赤ずきん、食事はできたのですか」 「はい! 言われたとおり干し肉は温存して、 山菜とキノコでシチューです!  いつもながら自信作です!」 「それはよかった」 ちっともよくなさそうな顔で言い、 中へ入りつつ女性はクリフを見た。
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