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「ねぇ、親に会いたい気持ちが、あなたに分かる?」
「……」
「私の親は、もういない。死んだの、一昨年……事故で」
なんか、語り出したぞ。これ、聞かなきゃいけないよな。話してる間は、白河さんが死ぬことはない……はず。それで安心感は味わえる、けど……重そうだなぁ。
「親戚に引き取られた。でも、そっけない態度しか取ってくれない。こっちから話しかけても、ろくに会話してくれない。もう、耐えらないの! ここで飛び降りれば、お父さんやお母さんに会える! だから、ここで死ぬの!」
今日は、よく喋るなぁ……。それも、自分の身の上話をペラペラと。俺が、白河さんのことを好きじゃなかったら、うんざりしてるところだね。
そもそも、死にたい理由なんて、どうでもいい。まず、俺がどうして呼ばれたのか……こっちの方が重要でしょ。その説明は、どこに行ったんだよ。
「でも……私が死んだとき、悲しんでくれる人がいない。だから、あなたに悲しんでもらう。目の前で私が死んだら、悲しいでしょ? あなたを呼んだのは、そういう理由なの」
悲しさよりも、ショックの方が大きいだろ。話して間もない相手が死んでも、涙とか出ないって。悲しくて泣くとか、想像できないんだけど。初恋の相手でも、それはないんじゃないか?
まぁ……人によるんだろうけど……。
「もう一度聞く。あなたに、何が分かるの?」
だから、何も分からないって……。
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