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静かな力強さ
さっきまで、白河さんは自殺しようとしていた。でも今は、そんなことを忘れて、俺の死について語り合っている。
ん……? あ、違う違う! 死じゃなくて、詩だ。俺まで間違えてどうすんだよ……。
「ここはもっと、こうしたらいいんじゃない?」
「いや……俺が表現したいのは、そういうんじゃないんだよ」
「じゃあ、どういうの?」
「分からない」
「……これ、完成するの?」
「質問ばかりは……もう、やめてくれ〜」
語り合うというより……今は、一方的な質問に答えている……。
「はぁ……分かった。質問はやめる」
「露骨な溜息……」
「黒真珠の意味は、知ってる……いや、調べたはず。だよね?」
そういえば、前にそんな話をしたような気が……。もしかして、重要な問いかけだったのか? 俺が持っている真珠の知識を試しているだけ……だと、思ってたんだけど……。
「調べてない……ん? これって、しつ……」
「調べてないの……そう……」
「ごめん! ごめんなさい!」
今の、質問だったよね? はぐらかされたよね?
あくまで、こっちが悪い姿勢で通すのか……。まぁ、謝るぐらいしかできないよなぁ。
「この詩から、黒真珠の意味を感じたんだけどな……」
「そ、そうなんだ……ごめん」
「謝るのは、もういい。早く、この作品を完成させて、私に見せて」
好きな人が、俺の詩を待ち望んでる……。
あ、なんか……良い……なぁ。
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