雪女

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雪女

「……何で、こんなの書いたんだろ」  思わず、ため息が出る。  クシャクシャにして捨てたい。でも、授業中にやるのはなぁ……。 「なあ、何やってんの?」 「……授業中だぞ」 「お前、美術の自習で勉強するの? バカなん?」  いやいや、自習は勉強する時間だろ。勉強しない方がおかしいから。  自分が正しいことを確かめるために、周りを見てみる。  うわ……勉強してないじゃん。どうして、自習時間に席を移動してんだよ。あいつとか、大声で笑ってるし……うちのクラス、どうなってんだよ。 「あれ? よく見たら、ポエムやん。真面目に勉強してんのかと思ったぜ」  あ……よく考えてみたら、俺も勉強してない。人のこと言えないじゃん。  まぁ、それは良いとして……ポエムってなんだよ。いや、正しいんだけどさ。ポエムって、変なイメージがあるから嫌なんだよなぁ。  白馬の王子に会いたい……とか、私は純情な乙女よ! とかさ。そういうのを想像してしまう。  こいつは、ポエムの意味、知らないんだろうなぁ。 「ポエム……間違いじゃないけど、詩って言えよ」 「詩的な文章だから、ポエムで良くね?」 「……うん、正論だから言い返せん」 「だろ?」  知ってんのかよ! 確か、揶揄する意味もあるよな……。もしかして、実はそっちの意味で言ってるのか? でも、わざわざ確認してもな……ちくしょう! どっちを言ってんだよ! 「それよりさ。もしかしてお前、雪女のこと狙ってる?」 「……どうして、そんなこと聞くんだよ」 「図星かよ……」  チラッと、窓際の席を見る。  端っこの席に座っている、女子と目が合った。 「ヒッ!」 「バカ! 見るのはダメだって!」  目つきが、怖い……。  周りの空気が凍てつくような視線……あの子の目を見るだけで、恐怖を感じる。俺だけじゃなくて、みんなが怖がる。  みんなは、恐怖を和らげるためにあだ名をつけた。  それが……雪女。  白河琴音は、雪女のように冷たい。  でも……綺麗だ。
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