第1章(1)ツバサside

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俺と母さんを見て、親子にしては仲が良すぎる。 何かがおかしい、って感じる人もいるだろう。 俺の家は元々仲の良い家族だったけど、もちろん昔はこれ程じゃなかった。 今も忘れもしない、2年前の春。俺が16歳になる少し前の出来事。 その日を堺に、母さんは俺に対する執着がいっそう強くなった。 俺の両親はとにかく仲が良くて、喧嘩してるところなんて、少なくとも俺の記憶の中には一度もない。 いってらっしゃい、おかえりなさいのハグやキスなんて当たり前だったし、家族で出掛けても夫婦必ず手を繋いで寄り添って歩くくらいで……。いつも姉貴と兄貴と三人で、気を遣って離れて歩いたっけ。 少し恥ずかしい気もしてたけど、今思うとすごく幸せな光景だった。 母さんはいつもニコニコしてて、俺達はそんな母さんを見てるのが大好きで、どんなに辛い事や嫌な事があっても家に帰ってその笑顔を見ると忘れられたんだ。 でも、その笑顔はある日突然消えた。 父さんの死という、俺達家族にとって最大で最悪な出来事と共に……。
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