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思わずガン見してしまっていると、そんな私に気付いたランが微笑んで言う。
「……画像、もっと見るっ?」
「!っ、……あ、ご、ごめんなさいっ」
「なんで謝るの〜?いいよ!てか、見て見て〜」
人のポケ電を覗き込むなんて失礼な事だ。
そう思って謝る私に、ランはずいっと更に近付いてくると画像が保存されているフォルダを開いて、その写真を撮った時の話をしながら見せてくれる。
「これがね〜、高等部に上がった時の写真!」
「ツバサ全部顔背けちゃってるでしょ?嫌がってるのに、いつも姉さんが強引に押し切るんだよ〜?」
「うっさいなぁ!だって、思い出は大切でしょ?一瞬一瞬を残しておきたいじゃない」
ランの解説にライがツッコミを入れて、またそれをランが押さえ込む。二人の賑やかなやり取りを見つつ写真を見せてもらっていると、楽しいような寂しいような……次第に複雑な気持ちが膨れ上がってきた。
「で、これが私のイチ押し!
学園祭の時の写真だよ〜。ツバサ、カッコ良いでしょっ?」
そして、自慢気に見せてもらったその写真を見た瞬間。感じたままの気持ちが私の口から溢れる。
「いいなぁ……。私も、こんな風に一緒に学校に通いたかった……」
学園祭の催しなのか、燕尾服を着て執事の格好をしたツバサがそこに写っていた。その写真の中の彼に相変わらず笑顔はないけれど、ずっと見ていたいと思う程に愛おしくて、画面にでさえも手を伸ばしたくなってしまう。
すると、私の呟きと様子を見たランがじっと見つめながら問いただしてきた。
「ーーツバサの事、好きなんだよね?」
「!……え?」
「レノアはツバサの事が好きなんだよねっ?どっかの国の王子となんか、結婚しないよねっ?」
「ちょっ!姉さん!」
必死に問いかけてくるランを、ライが止める。気不味そうに私とランを交互に見る彼は、私が自らの意志だけで結婚相手を決められない事を分かっているからだろう。姉の気持ちも、私の気持ちも、ライは考えてくれている。
ツバサの事が好きなんだよねっ?ーーー。
でも、私はその問い掛けには答えなくてはいけない気がした。
だから、深呼吸をした後、ランを真っ直ぐ見て言った。
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