第5章(4)レノアside

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「好きよ、ツバサが。 昔も、今も、きっとこれからも……私が特別に好きなのはツバサだけ」 その言葉を聞いたランは一瞬目を見開いて……。けど、すぐに微笑んで「良かった」って、たった一言だけ呟いた。 すると、次はライが遠慮がちに尋ねてくる。 「あのさ、レノア……ツバサと何かあった?」 「え?」 「前夜祭から帰って来てから、なんかツバサ様子が変って言うか……。多分本人は自然にしてるつもりなんだろうけど、元気がなくて……」 前夜祭の後から元気がないーー? ライから聞いた様子では、ツバサが明らかに私の事を気に掛けてくれるのだとは分かる。……、けど…………。 「私は、ツバサの気持ちが分からない」 「レノア?」 「別れ際にね、ポケ電の番号を書いた紙を渡したの。 ……でも、未だに連絡ないし」 自分の中では、大きな勇気と決断で渡したポケ電の番号。でも、いくら待ってもツバサからの連絡はない。 "必ず会いに行く"と別れ際に言ったが、彼から何の連絡がない今、想いは自分の一方通行な気がして……。会って拒絶されたら、って思うと怖くてすっかり私の心は強張ってしまっていた。 けれどそんな私を、ランの言葉が解かしてくれる。 「ツバサはもう、私に会いたくないのかも……」 「ーーレノア!それ、絶対に違う! ツバサは今ポケ電持ってないのっ……!」 「……。え……?」 まさかの事実に、私は耳を疑った。 ポケ電は今なら簡単に手に入るし、ツバサくらいの年齢になれば誰でも持っている物だったから……。 ーーそう、いけなかったのは"誰でも持っている物"。 その先入観を持っていた自分。今の彼の事を全く解っていなかった私の方だったのだ。 ランとライはゆっくり話してくれた。私と離れてからのツバサの事。ヴァロンさんが亡くなり、情緒不安定になってしまったアカリさんの為に夢の配達人を辞め、そして……色んな物を手放し、今も諦めている事を、……。
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