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「好きよ、ツバサが。
昔も、今も、きっとこれからも……私が特別に好きなのはツバサだけ」
その言葉を聞いたランは一瞬目を見開いて……。けど、すぐに微笑んで「良かった」って、たった一言だけ呟いた。
すると、次はライが遠慮がちに尋ねてくる。
「あのさ、レノア……ツバサと何かあった?」
「え?」
「前夜祭から帰って来てから、なんかツバサ様子が変って言うか……。多分本人は自然にしてるつもりなんだろうけど、元気がなくて……」
前夜祭の後から元気がないーー?
ライから聞いた様子では、ツバサが明らかに私の事を気に掛けてくれるのだとは分かる。……、けど…………。
「私は、ツバサの気持ちが分からない」
「レノア?」
「別れ際にね、ポケ電の番号を書いた紙を渡したの。
……でも、未だに連絡ないし」
自分の中では、大きな勇気と決断で渡したポケ電の番号。でも、いくら待ってもツバサからの連絡はない。
"必ず会いに行く"と別れ際に言ったが、彼から何の連絡がない今、想いは自分の一方通行な気がして……。会って拒絶されたら、って思うと怖くてすっかり私の心は強張ってしまっていた。
けれどそんな私を、ランの言葉が解かしてくれる。
「ツバサはもう、私に会いたくないのかも……」
「ーーレノア!それ、絶対に違う!
ツバサは今ポケ電持ってないのっ……!」
「……。え……?」
まさかの事実に、私は耳を疑った。
ポケ電は今なら簡単に手に入るし、ツバサくらいの年齢になれば誰でも持っている物だったから……。
ーーそう、いけなかったのは"誰でも持っている物"。
その先入観を持っていた自分。今の彼の事を全く解っていなかった私の方だったのだ。
ランとライはゆっくり話してくれた。私と離れてからのツバサの事。ヴァロンさんが亡くなり、情緒不安定になってしまったアカリさんの為に夢の配達人を辞め、そして……色んな物を手放し、今も諦めている事を、……。
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