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ミライさんがあと2、3年で夢の配達人を引退ーー。
衝撃的だったが、身体があまり丈夫じゃなくて怪我も多かったミライさんが長く夢の配達人を続ける事が難しい事は以前から知っていた。
だから『早く、僕の手から奪ってくれよ』って、師弟関係の時からずっと言われていたし、約束していた。
でも、あの頃と今とでは状況が違う。
俺はもう夢の配達人を引退したし、俺が側にいなくなったら……母さんはどうなる?
きっとまた泣いて、悲しんで……。今度こそ壊れてしまって、きっと……、……。
「っ……無理、ですよっ」
またあの時のように……。父さんを失って、消えてしまいそうになってしまったあの時の母さんを思い出して、心の震えが止まらなくなる。
お前が行けば、母親の命が消えるーー。
あの時、能力を通じて伝わってきた事を思い出して、"変わっては駄目なんだ"と当時の俺が"その場から動けないよう"成長を止めていた。
「俺にはっ……もう、無理なんですっ!!」
何も昔と変われていなかったのは、そのせい。
レノアに再会したあの夜に何も変わっていないと感じたのは、俺が、自分で自分自身を"父さんを失った日"に縛り付けていたからだった。
その事に、俺よりもいち早く気付いたシュウさんはそれに気付かせようと更に冷たい口調で続ける。
「ヴァロンなら、もっと上手く切り抜けたでしょうね?」
「!ッ……」
あえて父さんの名前を出して、俺を挑発した。
「彼は本当に優秀でしたから。悲しむ自分の母親の心も、そして自分も自由になれる道を見付けて、きっと上手く……」
「ーー俺はッ!父さんじゃないっ……!!」
思わず俺は、そう叫んでいた。
シュウさんに刺激されて、ヒビ割れた先にあった"何か"が噴き出る。そして、それをキッカケに留めどなく溢れてくる、"父さんの仮面の下にいる"本当の、俺。
「俺は父さんじゃないんですッ!!
俺は俺だッ!父さんみたいに出来る訳ないッ……!!
……!ッーー……、ぁ……」
そう叫んで……。自分の叫びに、ハッと我に返った。
俺は父さんじゃないーー。
そんな事分かって、自分で決めて、自ら被った仮面の筈だった。
……それなのに、俺はいつしか"自分で在りたい"と感じていた。
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