第5章(5)ツバサside

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……でも。 「……嘘。本当はただ……会いたかったの。 私がただ、ツバサに会いたかっただけ」 黙ったままの俺を見て不安になったのか、呟くようにポツリとレノアが言う。 俺に拒絶される事を怖がっているかのように、笑顔が苦笑いに変わっていく……。 もう、無理だーー……。 「ーー会いたかった」 「!……え、っ?」 好きな女性にそんな表情を見せられて、俺はもう、素直になるしかなかった。 俺の言葉に、予想外だったのか、レノアは大きな瞳を更に大きく開ける。 彼女の事を本当に想っているなら、ここは心を鬼にして追い返さなきゃいけない。……でも、無理だった。 「俺もお前に会いたかったよ、レノア」 「っ、……ツバサッ」 ずっと言えずにいた本音が、漏れる。 涙ぐみながら、でも嬉しそうに微笑ったレノアが抱き着いてきて、触れ合った瞬間。俺の心を覆っていた、ヒビ割れた鎧が飛び散った気がした。 まるで、翼を得た鳥が羽化するように、その殻を破って生まれ変わる。 鳥は、片方の翼だけでは羽ばたく事は出来ない。 俺に足りなかったのは、間違いなく彼女だったんだ。
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