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「ね?この後は何処に行く?ご飯?」
「飯?腹減ってんのか?
なら、ここのカフェスペースで食えばいいんじゃね?」
「ちがーう!
今日は誕生日プレゼントのお礼を私はしたいの!だから、ツバサの行きたい場所や食べたい物を言って欲しいの!」
今日も肌身離さず着けている誕生日にツバサに貰った夜空のブローチ。それを見せながら詰め寄ると、彼は"そうか"という表情をした後、「ん〜」と考え込んでしまう。
暫く様子を伺いながら待っていたけど、目を泳がせたまま全然視線を合わせてくれないからシビレを切らせて尋ねる。
「ないの?」
「……特には」
「ツバサ、普段は何して遊んでるの?」
「俺が何も言わなくても、ランやライがすでに決めててそれに付いて行く感じだからな。
……うん。だから、レノアの行きたい場所でいいよ」
「……」
「久々に港街に来たんだ。ゆっくり行きたい場所とか、懐かしくて行きたい場所や食べたい物、あるだろ?」
「……何よ、それ。全然分かってない」
ツバサの返答に、私は思わずそう呟いてしまった。
だって、結局やりたい事や行きたい場所を言ってもらえない。しかも、私任せ。
それって、つまりは私と一緒にやりたい事や行きたい場所がない、と言われているのと同じように思えて何だか寂しくなったのだ。
「?……レノア?」
「分かった。……カフェスペースでご飯でいいよ」
ランとライに聞いた、私が知らない間のツバサの境遇。そのせいで、彼がすっかり他人に合わせてしまうようになり、自分の気持ちを素直に言ったり積極性が以前より欠けてしまっている事は仕方のない事だと思った。
けれど、さすがに寂しい気持ちを抑え切れない。でも、せっかく一緒にいるこの時間を本当は一秒も無駄にしたくない。
そっぽを向き、足元に来ていた白うさぎを抱き上げてこの場をやり過ごし、何とか気持ちを持ち直そうと思った。
せっかく会えたんだもん。
喧嘩したり、言い合ったりしたくない。
一緒に微笑って、楽しく時間を共有したいと思ったから……。
沈みかけた心。
しかし、なんとビックリ。まるで一度地上に落とされたのに、一気にまた天に昇らされるような……。私はこの後人生初の胸キュンをする事となる。
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