第6章(1)レノアside

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まさかツバサのこんな姿が見られるなんて……! これは予想外の出来事。 しかし、胸キュンはまだ終わらない。驚きと感動でポーッと見惚れていると、顔を少しそっぽを向けたまま視線だけチラッとこちらに移したツバサが呟く。 「そう言うお前は……どうなんだよ?」 「!……え?」 その質問がどう言う意味か一瞬分からなくて目をパチクリさせる私。するとツバサが少し不機嫌そうな表情と口調で言葉を続けた。 「離れてから、色んなそのっ……御曹司とかと出会って……、その……。っ……どう、なんだよ?」 「ッーー……」 こ、これは……。もしかし……なくても、……。 ツバサが、ヤキモチ妬いてくれ……てる?! 更に追い討ちを掛けるかのような彼のツンデレ発言に胸をズギュンッと撃ち抜かれた。 目の前に居る拗ねた子供のような彼を見れば、恋愛経験がない私でも分かる。 どうしよう。こんな可愛い姿を不意打ち同然に突然見せられて、表情が緩んでしまうのを抑え切れる筈がない。堪え切れない溢れる笑顔と弾む声で、私は答えた。 「っ、……する訳ないでしょ!ツバサ以外と!」 離れてからこれまでの悲しみや寂しさも、一瞬で解かされてしまった。 「正真正銘、今が……。ツバサが私の初デートの相手だよっ!」 ツバサの口調を真似て意地悪く返したかったのに、"幸せ"だと叫ぶ心に1ミリも逆らえなかった。 好き。大好きっ。 尽きる事なく溢れてくる胸いっぱいの感情。ずっとこの気持ちに満たされながら彼の隣で生きていきたいと、私は心から思った。
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