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第6章(2)ツバサside
胸のあたりがずっとムズムズしてる。
昔はあんなに楽しくて一緒に居ると心地良かったレノアの隣が、今は落ち着かない。
俺も会いたかったーーー。
そう言ったあの瞬間から、俺が……。いや、世界が少しずつ変わったような感覚に陥っている。
「いらっしゃい!
おや、君はこの間の……」
ここは3年程前に出来た、港街にある小さなアクセサリーショップ『emina』。
入り口を開くとカランカランッと扉に付いている小さな鐘が鳴って、来客の存在に気付いた店主さんがカウンター越しに俺の顔を見てニコリと微笑った。
「こんにちは。この間は、色々相談にのって頂いてありがとうございました」
軽く会釈をしてお礼を言うと、店主さんは「いやいや」と左手を小さく振りながら答えてくれる。
そう、ここは俺がレノアの誕生日プレゼントに選んだ夜空のブローチを買った店。迷っている俺に優しく声を掛けてくれて、その際に色々話をしたからどうやら俺の顔を覚えてくれていたらしい。年齢が父さん同じ位で"優しいお父さん"って雰囲気を纏っているから、とても親しみやすい店主さんだ。
「また来てくれたんだね、嬉しいよ。あの時のブローチは……」
「ーーうわぁ〜、可愛いアクセサリーがいっぱい!」
店主さんと話している俺の背後からひょこっと顔を出して、カウンター上のガラスケースに並ぶ商品を見ながらレノアが嬉しそうに声を上げる。
この店は正直広くない。俺達が居る客側は5人も人が入れば上手く身動きが取れないくらいで、カウンターから奥の店主さん側も同じ位の広さしかないのだ。
故に、人と人の距離が近い。小動物カフェからの行き先を結局自分で提案出来ず、「ならこのブローチを買ってくれたお店に行ってみたい」と申し出て来たレノアの言葉を断り切れなかった俺に非があるが……それにしても、近い。近過ぎて、落ち着かない。
「お、おいっ」
「こっちもいいし、こっちのやつも綺麗〜!」
「おい、もう少し離れ……」
「う〜迷っちゃうなぁ。両方買っちゃおうかな〜?
ねっ?ツバサはどっちが可愛いと思う?」
「!っ……〜〜」
アクセサリーを見ていたと思ったら、パッと俺を見上げて笑顔を向けられてドキッとする。
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