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序章 ツバサside
18歳の誕生日を迎える1週間前ーー。
幼い頃の想い出を夢に見た。
そう、あれは確か10年前の事。
俺が8歳の頃の出来事だ。
その日、俺はみんなと港街の広場で遊んでいた。
みんなって言うのは、俺と姉貴と兄貴と、両親の友人の子供達。
俺の両親は人と人の間に壁を作らないフレンドリーな人達だったから、そんな柔らかな雰囲気のお陰か俺達子供同士もすぐに仲良くなって、定期的に集まっては遊んでいたんだ。
だから遊び終わって、バイバイの時間が来ても「1日あっという間だったな」「もっと遊びたいな」って気持ちはあったけど、「またすぐに会えるから」と思えて、寂しい気持ちになる事はなかった。
会いたいと思えば、いつでも会う事が出来るーー。
俺はこの日まで、そう思っていた。
辺りが少しオレンジ色になってきて、バイバイの時間まであと一時間位になった頃だろうか。
「じゃあ、最後にかくれんぼしよ?
でも、鬼に見つからなくても18時の鐘が鳴ったら噴水に集合よ?いいわね?」
俺達の中で最年長の姉、ヒナタの提案でこの日の遊びのシメにかくれんぼをする事になった。
ジャンケンをして鬼を決めると、鬼が目を伏せて両手で顔を覆って数を数えている間にみんな各々の場所に隠れようと走り出す。
さて、俺も隠れるか!
そう思って駆け出そうとした瞬間、誰かが俺の服の裾を引っ張って止めた。振り返ると、そこ居たのは友達の1人レノア。
どうかしたのか?と、首を傾げると
「私、ツバサと一緒に隠れたい!……ダメ?」
彼女はそう尋ねてきた。
レノアは赤みがかった茶色の髪と瞳の女の子。偶然にも誕生日が俺と同じだったが、当時10歳で二つ年上のお姉さん。そんな彼女は普段とてもしっかりしていて、何でも自分でやるって勝気な性格だった。
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