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「レインは背が高いからこの服がいいかな?」
遅めの昼食を取った後に、着物の丈を合わせるように胸に当ててきた。
まるで着せ替え人形だ。
俺は楽しそうに選ぶウォルを横目でみながら黙っていた。
服を着るのを手伝うと話してきたので、1人で着るからと、素早く奥で着替えに走った。
あれから4日が経つ。
包帯を付けていた時は男だと思っていたから、何とも思わなかった。
いろいろ分からない俺に、なんでも手伝おうと世話を焼こうとしてくれるのはありがたい。
俺よりもずっと年下かと思ってたが、今年20歳になるらしい。
正直、他人と関わる事をしなかった俺にはその距離感に困惑する。
部屋へ戻ると、いつの間にかウォルの姿がなかった。
「診察かな?」
土間を抜けて廊下を行くと、
ウォルの診療所の部屋がある。
扉が無い代わりに、カーテンの布で仕切られていた。
そこには、包帯や薬瓶、治療に使われる器具、診察台がある。
そのすぐ横で、ウォルが村の人を治療していた。
廊下には5〜6人ほどの村人が順番を待っている
ウォルはヒョンゴ村の医師だ。
診察や他に近くの村や町へも往診にも行く。
貧しい者や子供、年寄りからは代金をもらうことなく、的確な診断と治療を施してくれると近隣の村や町では有名らしい。
「あ!レイン、そこの薬棚から薬出してくれる?」
「これ?」
「そうそう!ありがとう」
まだどうしていいのか答えを出せずにいたが、ただ黙っている訳にいかず、しばらくはウォルの手伝いをする事にした。
「助かるわ」
薬棚を整理しながらウォルが言った。
村の人々は初め、ブロンド・碧眼の俺をみて驚いてはいたが
ウォルが命の恩人だと説明してくれたおかげで、後ろ指を刺される事もなく過ごせている。
特に彼女は突然現れた俺を気味悪がらず、根掘り葉掘り聞き出そうともせず、ごく普通に接してくれていた。
すべてウォルの配慮のおかげだ。
黙々と薬棚を片付けていると、ウォルが言った。
「街へ買い出しに行かない?半夏ももう少ししかないし…」
「半夏?あぁ腹痛用の?」
「決まりね!」
今日の診察が終わったら!と半ば強引に言い、診療所の中へ足早に戻っていった。
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