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患者が途切れたあたりで、街へ買い出しに出ることにした。
村からは歩いて20分程のところに、プギョと言う街がある。
河沿いには船着場があり、たくさんの船が止まっている。
村とは違い、町では国内の四方八方から行商人が来る為、髪色が目立たないように布を頭に被る事にした。
市場には野菜から薬、簪屋、色とりどりの着物
を売る店でひしめき、活気で溢れている。
来月は春のお祭りがある為、行商人や買い出しくる人々が、国のあちこちから集まると横でウォルが楽しそうに話していた。
「凄い人」
初めての光景に辺りを見回す。
「はぐれないでね!」
と、俺の袖を掴みながら人混みをかき分けて歩いた。
薬材の材料店に寄り、足りないと言っていた半夏、陳皮、葛の根などを買った。
麻袋にぎゅうぎゅうに詰めてあるので、結構重たい。
ん?
さっきまで居たウォルの姿がない。
「レイーン!こっちー」
呼ばれた先には甘い匂いが広がっている。
店先では大鍋に沢山の揚げた餅が入ってた。
それを竹籔に取り出して、琥珀色のトロッとした蜜に付けたお菓子を売っている。
「んー!美味しい、これ大好きなのよね!」
唇についた蜜を指で拭きながら、口いっぱいに頬張る姿はリスみたいだ。
「プッ‼︎」
堪えてられず、俺は思わず吹き出した。
その無邪気な仕草は、気持ちを暖かくしてくた。
「やっと笑ってくれた」
ウォルが嬉しそうに微笑む。
そんな横顔を見ながら「次はあっち!」
と、ウォルが袖を引っ張っていった。
市場の中には何件が飯屋がならんでいて、
まだ陽が高い内から、酒を飲みながらツマミを食べている。
ウォルはここがいいと、空いている木のテーブルへ座った。
「あら!ウォル先生!」
人気の店なのか騒がしい店の奥から、体格の良い女店主が近づいてきた。
「久しぶりね、いつものと、クッパ2つ!」
ウォルは慣れた様子だ。
「はいよ!…あら!先生ってばいい男つれてるじゃないのー」
「診療所で手伝いをしてもらってるの、レインと言うのよ、よろしくね」
女店主は俺の布の下からみえる髪色や、目の色が土地の人間とは違うと気づいたようだが、
詮索せずにニコニコしながら奥の調理場へ入っていった。
「さぁー食べて食べて!」
さほど時間もかからずに料理が運ばれてきた。
野菜のキムチや豚の皮の焼き物、クッパの他に女店主が奢りだと言って、陶器に入った酒瓶を持ってきた。
「ほら、ウォル先生も飲んで!診療所は閉めてきたんだろ?」
「そうね、頂くわ」
「ほら!こっちの兄さんも!」
差し出された椀に注がれた酒を一口飲んだ。
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