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「久しぶりに飲んだなぁ」
腕の酒を一気に飲み干したウォルが言った。
童顔のせいか酒を飲んでいる姿が変な感じだ。
「いい飲みっぷりだね、先生!」
いつも先生には世話になってると、隣の席の夫婦が話しかけてきた。
「兄さん、先生のいい人かい?」
ウォルが真っ赤になった。
「違います!」
もうっと言いながら怒るウォルをみて、周囲から笑い声があがった。
若いがウォルは、皆んなに慕われる医者なんだと思った。
しばらくして、空がだいぶ薄暗くなってきた。
活気があった昼間と違い、夜の街中は松明の灯りが転々と灯りはじめている。
日中ほどの騒がしさはないが、周囲の飯屋や飲み屋からは人々の楽しそうな声がもれていた。
そろそろ帰ろうとした時ー…
ウォルがさっき買った薬草の袋の中をごそごそ探しだした。
「どうかした?」
「うーん、頼んでいた姜黄と桂皮が入ってなくて」
いつも頼んでいる物だから、入れ忘れは無いと思ってたそうだが、念のため確認したら入っていない。
「まだ店が空いてるはずだから、取りにいってくるね。ここで待ってて」
と言ってウォルが席をたとうとしたが、
「日も暮れてきたし、俺が行くよ」
そう言って女主人にウォルを頼んで、さっきの薬材の店に向かった。
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