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次の日の早朝、
ウォルの祖父・ウシクが訪ねてきていた。
俺はウシクに2人で話したいと、ウォル達に席を外して欲しいとお願いした。
「…して、返答は出たのかな?」
ウシクは真っ直ぐにこちらを見据えて言った。
「俺…死ぬつもりでした。でもウォルとこの不思議な力に生かされた。生を与えられた事に何か意味があるんだと…今は思います。」
「そうか…」
長い髭を触りながら、うんうんと頷いた。
「ウォルの無鉄砲さにさぞ、驚いただろう」
溜息を吐きながら、ウシクが話し始めた。
「あの子の母も医者でな。
父は王族の血を引いていた。
ウォルが産まれてすぐに、父も母も殺されたのだ…。
特別な力を持っているのを知ったのは随分後だった。
私が戦地遠征から帰還すると、
皇宮ではウォルのその力を、政治の駒に使おうと目論んでいた。
あの子を守る為にこの地へ辿りついたが、私は未だに皇宮の武官…。いつも側にいてやる事が出来ない。
昨日の輩は西からの間者だ。いつまた襲われるともわからんのだ。
君が留まってくれるなら。まだ慣れない地でこれからどうしたらいいか迷ってるのはわかっている。それが見つかるまででいい。
側で…護ってやって欲しい。」
そう話してウシクは深く頭をさげた。
王族…じゃあウォルはお姫様なのか?
話を聞きながら、生きてきた世界は違うが、
どこか自分と重なるものを感じた。
それから俺らは街を後にして、
ヒョンゴ村に戻った。
「毎日の事!」と言い昨日の出来事を気にする素振りもなく、
ウォルはすぐに診療所を開けていた。
彼女の明るい笑顔にこっちまでつられてしまう。
この先の事はいくら考えても、まだ整理がつかない。
今ここにいる現実も。なぜ生きているのかも。
俺は診療所を手伝いながら、
時間の許す限りウシクに稽古をつけてもらう事にした。
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