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第五章 鬼神ウシク
ザッザッザッ…
「はぁっ…はぁ…」
ヒョンゴ村からプギョまでの獣道を、1メートル超えるほどの薪の束を背負う。
足には左右に1つずつ砂袋を縛り、道なき道を往復駆け上がる。
往復100回、これを1日2回師匠から言われたノルマだ。
体力を先につけろと言われ、ここ4週間程毎日欠かさず走っている。
この世界に来てから、現代と古代の体力の差を痛感させられていた。
春先とは言え山道に入れば気温も下がり、まだ吐く息は白い。
しかもこの山には先日、虎が出たらしい。
護身のために持たされた刀を腰に結びつけているが、重いため傾斜に差し掛かると、さらに脚が上がらなくなってくる。
山道を往復し、やっとヒョンゴ村の田畑がみえてきた。
「…師匠!」
道の脇の切り株に腰を下ろし、待っていた。
「さ、次へ行くぞ」
腰をトントンと叩きながら、スタスタ先へ歩いて行った。
見た目はか弱そうな老人の姿な為わかりにくいが、
ウォルが言うに皇宮の将軍だそうだ。
週に何回かは、王様の勅令があり、忙しい身だが俺に時間を割いてくれている。
さすが死線をくぐってきた武官。
教えも超スパルタだ。
休む間もない。
家の土間に背負っていた薪をおろし、師匠が待つ外へ出た。
ブゥンッ
「わっ」
扇子を刀の様に振り下げただけなのに、異常な程強い風圧。
「余所見をするでない、さあ腰の刀を抜け。」
毎日刀を振る練習をしてるが、片手で持つにはかなり重い。
振り上げた勢いで体勢が崩れる為、脚にグッと力を入れる。
「本気で斬りにかかれ」
「ヤー‼︎」
「迷い、雑念は相手に隙を与える」
そう言って軽い足取りでかわしながら、俺が振るった刀身を軽く扇子で叩き落とした。
レベルが違いすぎて、競り合いにもならない。
「もうお終いか?」
ゼーゼー乱れた呼吸がやっと落ち着いてきた。
「まだまだ!」
師匠は長い髭を触りながら、ニヤリと笑った。
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