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「どうしたんですか、師匠?」
後片付けをしていたら、難しい顔をしながら何やら手紙をジッとみつめていた。
王様の印が押された手紙のようだが、
読み終わると卓の上へ捨てるように放った。
「…すまんな、稽古はまた今度だ。皇宮へ戻らねばならん」
近々、西の使節団が高麗に来るとかで皇宮内が慌ただしくなっているそうだ。
皇宮には沢山の官僚がいるらしいが、全員が王様の味方ではない。
常に皇宮では、隙あらば手の上で転がせられるか、豪族同士が権力欲しさに足の引っ張り合いをしているのだ。
己が権力を得ようとする様は、俺が殺しを請負ってきた要人暗殺の依頼主によく似ている。
皇宮と言う場所は底なしの泥沼だ。
西の使節団が来るならば、それ相応の警備にも慎重な行動が試される。
一武官が、将軍として王様の信頼を一心に受ける師匠は、王様のお目付け役である事も仕方のない事だ。
しばらく稽古は諦めよう。
そう思っていると師匠から提案があった。
「ウォルが明日からハクマンと言う村へ、
往診へ行くと話していたな?」
ヒョンゴ村の医師ではあるが、医師がいない近くの村まで往診の為に出かける事があり、護衛として同行の準備をしていた。
「そこに行ったらスリと言う女を訪ねろ。
これを見せればすぐにわかるだろう」
赤い組紐に翡翠の玉がぶら下がったノリゲと言う飾りを渡された。
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