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「そんなに怒らないでくださいよ、ウォル嬢」
屋敷の奥から後で髪を1つに結び、大きな翡翠の玉の簪を刺した女が歩いてきた。
ここの主人だろうか。
「客人に大変失礼な事を致しました。さぁどうぞ中へ…」
そう言うと周囲に目配せをし、倒れている女達を連れて行くように合図を送った。
「…あの人がスリよ」
ウォルが言った。
俺は状況がのめないまま、ウォルと共に屋敷の中を進んだ。
広い屋敷の中から、どこからともなく音楽が聞こえる。
長い廊下の脇から、艶やかな着物を着た者や、
まだ幼い子供達がこちらを伺っていた。
珍しい髪の色や目の色が気になるようだ。
奥の客室は鮮やかな朱色の椅子や、卓が並んでいる。卓の上には来るのを待っていたかの様に、酒や肴が並んでいた。
「ようこそおいで下さいました、私が主人のスリです。話はウシク様より、お聞きしておりました。」
「……なぜあんな事を?」
ウォルの声色は不機嫌そのものだ。
「ウシク様からレイン様の武器指南役をお願いされましてね。
実力はいかほどかと、試させて頂いたまで」
なんだか、2人の間に見えない火花が散っている…
「ウォル、さっきの倒れた人達の治療お願いしていいかな?
微弱ではあったけど、両脚が痺れて動くにもしばらく時間かかるだろうから」
ジッと俺を見つめてから、わかったと言って客室を出ていった。
「…お嬢の扱いをよく熟知されているようで」
ニッと笑いながらこちらをみた。
「あ、あの、師匠から聞いていたと言われましたが…」
「私ですか?表向きは芸妓屋の主人。
裏ではウシク様の傘下である武器商人兼、情報屋ー…と申せばわかりやすいでしょうか。」
スリは口元を抑えながらホホッと小さく笑った。
「…本当この国では見たことがない金糸の様な見事なお髪ですね、正直驚きました。
そして神龍の宿主…
雷光は選ばれた者への恩恵。
体内に内功を宿す者は、この大国、高麗にも数々居ますが貴方の様に神降しをしたと言う人間を初めてみました。」
「内功を宿す者…?」
「えぇ、ウォル嬢の様に治癒の能力を持った方は非常に稀。
ウシク様は王族の血筋なので、孫のウォル嬢に皇宮内の議政府(ウィジョンブ)がいつ目をつけてくるのか…心配なのです。」
こちらの表情を伺いながら、スリがコホンと咳払いをした。
「強大な力は毎日鍛錬していても実際、操るには大変な気力を使うと聞きます。
体術は長けていらっしゃるが、武器の扱いは慣れてらっしゃない。
まだ未成熟な内功なれば、そこを補う為にも武器を先に体得した方が良いのです」
そう話すと、手のひらを2回叩いた。
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