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「ごめん…泣くつもりは…」
手の甲や手のひらで一生懸命に拭うが、涙はそう止まる気配がない。
グイッ
頭より先に腕がウォルを自分の胸へ引き寄せていた。
「あっ…」
全体的に細身な体型だと思っていたが、抱き締めた腕の中にすっぽりと収まった。
思ってた以上に華奢なその肩は、力を入れたら壊れてしまうのではないかと思えた。
両腕に包み込みしばらくすると、それまでソワソワしていたウォルが、
俺へ身体を委ねる様に寄り添った。
「涙止まった…?」
胸元から見下ろしたウォルの耳はすでに真っ赤になりながら、コクンと小さく頷いた。
これがなんと言う感情なのかー…
感じた事の無い幸福が身体中を巡る。
不思議と胸が高鳴る、こんな気持ちは産まれて初めてだ。
ーーー
「もう…大丈夫」
そう言って、名残惜しそうに体を離した。
「うん」
俺はこのまま抱きしめていたら、抱き潰してしまいそうなこの気持ちをぐっと堪えながら
平静を装うので精一杯だった。
「…みんなの所へ戻ろう」
顔が熱い。
後から湧き上がる恥ずかしさを隠す様にウォルの手の平を握って俺は前を歩いた。
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