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第七章 皇宮勅令
滞在中に使用している診療所で手伝いをこなしながら、今日で2週間が経とうとしていた。
教坊を行き来しながら、艶やかな着物や宝石を着飾る妓生が、宴席や貴族の宴に花を添える芸妓だと言う事を知った。
「にいちゃーん」
俺を呼んだのは教坊での1番年下の双子のファンとテグだ。
「今日もオレらと一緒に練習ね!」
「あ、でも姉貴達から洗濯頼まれてた」
まだ10歳くらいだが、その動きは俊敏でまるで獣のようだ。幼いと思って手加減すれば、痛い目をみる。
行首いわく、彼らも能力を秘めているらしい。
「じゃあ洗濯終わらせてからにしようか、俺も手伝うよ」
「本当⁈やったー‼︎」
2人の顔から満面の笑みがこぼれた。小間使いの仕事の中で洗濯が1番、嫌いらしい。
昨日から教坊内がバタバタと忙しいようだ。
それまでは様々な暗器を使いこなす使い手と、日替わりで組手の様に練習をしていた。
そのせいか双子に水仕事が回ってくると、ファンとテグは愚痴っていた。
「にいちゃんさ、そろそろヒョンゴ村に帰るんだよね?」
「え!帰っちゃうの?まだ居てよー!」
いつも2人は息がぴったりだ。
「うん、ウォルも村での仕事もあるしね」
シュンと落ち込む時も同じタイミングの良さに思わず笑ってしまった。
「にいちゃん!ウォル姉と恋人同士なのか?」
ファンがキラキラした目で聞いてきた。
前振りもないファンの発言はいつも突然だ。
「好き同士、お似合いだよね‼︎」
テグがファンと相槌を打ちながら続く。
「…あのねぇ、今はこれ終わらせないと」
2人は勘もするどい。隙あらば、この手の話はエンドレスで続き、最後は教坊内の妓生達に光の速さで伝わるだろう。
目線の先の山積みの洗濯をチラッと横目で見ながら、バチャバチャと水洗いをし始めた。
しばらくすると、村の市場付近がザワザワと騒がしく音がする。
ー…ウォルが居る診療所の方だ。
「?」
「にいちゃん?」
何だか変だ…。
2人を洗濯場に残して、急いで階段を駆け上がった。
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