第七章 皇宮勅令

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なだらかに続く階段を駆け上がると、市場の裏へ出た。 いつも騒がしく商いの声が飛び交う市場が妙に静かだ。 その店先では仰々しく人々が、道に膝をつけ頭を下げているのが見えた。 その先頭を馬に乗った官服の役人と、赤色の鎧をつけた20人程の兵士達が後ろを歩いていた。 「…」 鼓動が早くなる。 嫌な緊張感だ。 市場の天幕の脇からそっと覗くと、扉から兵士と共にウォルが外に出ている。 思わず身体が飛び出してしまいそうになったその時ー ファンとテグが静止した。 「ダメだよ、にいちゃん」 「あれは皇宮の役人だ!」 今飛び出したら殺されると2人は言った。 ウォルが連れていかれる! 「…2人とも、ここから動くなよ」 心配する双子の肩をポンッと軽く叩き天幕を飛び出した ウォルの目の前にはチョルリプと言うを戦笠を被り、緋色の軍服を身に纏った男が立っている。 隙を見て、後方から回り込む。 1番後ろの兵士の足に足払いをし、刀の鞘で弾き飛ばした。 歩きながら流れる様に1人、また1人と薙ぎ払っていった。日頃の厳しい鍛錬のたまものだな。 「何者だ!」 残りの兵士はこちらへ警戒しながら、全員が槍の切先を向けた。 「レイン!」 戦闘態勢の兵士達など気にもせず、スタスタと司令官らしき男と、ウォルの間に立ちはだかった。 「貴様、何者だ?」 「この方の護衛です。どちらへお連れしようとなさっているのですか?」 男は戦笠をクイッと上へ軽く持ち上げながら、俺の様子を見ている。 「王の勅令だ。ユ・ウォルファ様を皇宮まで丁重にお連れしろとの御命令だ。」 手にはウォルに宛に書かれた書状がある。 周囲の人々が書状をみながら小声で何故役人が…とざわついている。 「レイン…王様の勅令なら従わない訳にいかないの、貴方はここで待ってて」 背中越しに聞く声は、小さく震えていた。 「…俺も行く。ウォルを1人にさせない」 それ以上、ウォルは何も言わなかった。 ギュッと俺の手を握った所から、言葉を交わさなくても気持ちが伝わってくる。 しばらくして、役人がウォルに用意した王族用の輿へ乗る様に誘導した。
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