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「おぉ!姫よ、よくぞ参られた」
王の謁見の間に入ると、広い空間には王を中央に、左右には紫色と青色の韓服を着た沢山の役人達が整列している。
高座には、濃いえんじ色に胸章には金色の龍の紋様が入った韓服の男がこちらに向かって笑顔を向けた。
「…ご無沙汰しておりました、邸下」
恭しく、ウォルが頭を垂れた。
「母君のお若い時とそっくりだ。美しくなられたな。医者としての有能ぶりは皇宮まで届いていたぞ。」
「…邸下にお誉めのお言葉を頂けるなど、至極光栄にございます。」
「隣の者が姫の護衛か?」
不意にこちらを向き驚いた。
「はい、師父のウシクからも許可は頂いております。」
「その者の噂も聞いておったぞ。ふむ…この国では見た事がない風貌だな」
…何やら珍獣を鑑賞しているかの様に視線が刺さる。
一国の王はニコニコしながらこちらを眺めている。
「皇后も其方がくるのを心待ちにしておったのだが、体調がすぐれずに今日は居室にて休んでいるのだ。
是非、姫から見舞ってやってくれまいか?」
「かしこまりました。すぐに参内させていただきます。」
「後、夕刻には其方の宴を開く。尚宮に部屋を用意させた故、時間までゆるりと休まれよ。」
尚宮に案内されて、謁見の間を出ようとした時、
話の終わりを察知してか、王の左右に待機していた役人の1人が廊下で待っていた。
「ウォルファ様、よくぞお戻りになられました!心よりお喜び申し上げます。」
恭しく微笑みながら頭を下げる様は、どこかあざとさを感じる。
「シジュン殿、今回は勅令にて参内したまでです。
皇宮を出た者が今更戻るなど、他の内侍府が黙っておりますまい。…失礼致します。」
ウォルはそう言うと一礼した。
男の目の奥で何か暗躍しているようだ。
何か言いたい事がありそうな感覚を残し、
一礼して俺をジロリと見ていた。
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