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第八章 ある幼き日
皇后の居室には尚宮か医女、宮女しか出入りを許可されておらず、心配するレインには客室で待つように言った。
彼の心配した顔をぼんやり思い出しながら、長いシンと静まった廊下には歩く音だけが響く。
通りには至る所に高麗でも高価とされる青磁の花瓶に、大輪の牡丹の花が飾られていた。
皇宮を離宮してもう14年ー…
師父に引き取られたのは6歳になった頃だった。
その当時の高麗の王は師父の甥にあたる方だったと言う。
王族の血を引く師父と父だったが、時の権力争いで国内は常に戦の絶えない治安だった。
それに加え、王は政権は議政府や官僚に任せ、自身は歓楽に明け暮れ、財政を湯水の様に使っていたのだ。
気に食わない事があれば、ところ構わず人を斬り殺す残虐な一面もあった。
師父と父は余計な血をこれ以上流させない為にも、王権から退き、軍官として王の下に伏す事に決めた。
ある戦の折に父は大怪我を負い、死の淵を彷徨った。その時に助けたのが、医者であった母だった。
2人は恋に落ち、私が産まれた。
城下町のケギョンの土地に家を建て、皇宮から離れて幸せに暮らしていたある日ーーー
恵民署で働いていた母を王が欲っしたのだ。
父は王に懇願し、なんとか諦めさせるように仕向けたが王は権力で物にしようと邪魔な父を逆賊扱いした。
ーーその頃、師父は元の奪還の命で戦地に出向いていた。
戻ってきた時には城下の家は無残に荒らされ、中には殺された父と自決した母の亡骸だけが朽ちてあったと言う。
師父は私が居なくなっている事に気づき、王の足元で懇願した。
だが師父が知る前に私に治癒の内功がある事を王や議政府に知られ、城内の離宮に幽閉された。
幼すぎて自分の置かれている状況に気がつくまで、かなりの年数が経った。
師父はずっと悩んでいただろう。
武官が王に対する忠誠の誓いは破ってはならない事を身に染みてわかっている。
だが父と母を無残に殺され、幼い私をも道具の様に扱った王が心の底から許せなかった。
そしてー
私の為に王を討つ事を決めた。
もともと王の悪癖に対してよく思っていない官僚が多く、民からも不満が上がっていた。
師父を次の王へ暗躍していた議政府を陰で操り、
王の玉座を陥落させるには簡単な事だったが、師父はその後の王権に関わる事を一切拒んだ。
次の王に擁立の声が上がったのが今の洸愍王で
私の従兄弟にあたる方だった。
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