第八章 ある幼き日

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「ユ・ウォルファにございます、皇后陛下」 「姫…?本当に姫君か…⁈」 床から尚宮に起こしてもらった、皇后が急いで駆け寄ってきた。 「皇后様!」 「おぉ…ファヨンにそっくりだな」 突然の行動に尚宮達は慌てている。 涙を浮かべながら、私の頬を包む様にみつめた 母ファヨンは元から嫁がれて間もなかった今の皇后の、良き話し相手だったと聞かされていた。 「皇宮を離れ、苦労したのではないか?」 脈を測っている私をジッと見つめ問いかける。 「……城を離れ医師として、毎日民と過ごして参りました。 当時、邸下と皇后様の計らいがあったおかげで今は幸せに過ごさせて頂いております。」 そうか…と緊張が解けた様に皇后が言った。 「気脈が乱れておりますね、滋養に良い漢方薬を処方いたしましょう。」 「それより…姫よ、共の男の話を聞かせてくれぬか?」 急な不意打ちに一瞬で顔が真っ赤になった。 「ど…どこからそれを…!」 「ウシクから全部聞いておるぞ。龍を宿した男だとか…」 おじいちゃんー‼︎ まさか邸下や皇后までに伝わっていたとは… 恥ずかしさで今すぐどこかに隠れてしまいたいと思った。 「姫よ、鬼神と謳われたウシクは喜んでいたぞ。その男はそれほどまでに大切な男なのだな。」 自分の事の様にほころぶ皇后の問いに嘘はつけなかった。 「…はい。大切な方にございます。」 「…そうか、早く私も会ってみたいものだ」 元々病弱な皇后の真っ白な顔に少し赤みがさした。 私は複雑な心境のまま、癒しの力で手を握りながら診察を続けた。 邸下や皇后は純粋に私を向かいいれたが、 先程の左議政のハ・シジュンの行動が頭から離れなかった。 勅令とはいえ、私が参内した事で大きな惨事を招いたのではないかと不安が一気に押し寄せた
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