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奴隷商人に誘拐されたあの日ー
初めて貴方に出会った。
金色のたんぽぽの綿毛の様な髪に、
澄んだ青の瞳ーーー
間違いなく、この国の人間じゃない事が一目でわかる。
一緒に過ごす内に、いつも寂しげな瞳から目を逸せなかった。
どこか自分と重なる…
そんな彼に心を奪われた。
愛おしいなんて感情は、生きてきた中でそんな経験はなかった。
父や母から引き離され、閉じ込められていた間は書物だけが唯一の拠り所だった。
前王は出来るだけ私を人目から隠す様にし、師父が会いたいと言う要求も一切受け入れず、数人の宮女を側に監視として置いていた。
長く感情を殺して生きてきたせいか、師父に助け出された時には、
人形のようだったと言っていた。
それからは感情を出すのが苦手になった。
笑って入れば問題ない。誰も心配しない。
それからは「笑う」だけになった。
でも彼に出会ってから蓋をしていた感情が溢れ出す様になってしまった。
彼が笑う顔をみるだけで、不思議と心が弾む。
彼の大きな手で触れられただけで、安心する。
その青の瞳に見つめられると、胸が締め付けられるようだ。
極度の緊張からか、安堵したのか意識が遠のいたーーーーー
「…ル」
「…ウォル、大丈夫?」
「…レイン」
気づけば客室の床の間に寝かされていた。
「ずっと居てくれたの?」
「うん」
彼は短い返事を返すと、私の頬にそっと触れた
その指先で軽く触れる様に唇をなぞると、金色のまつ毛が目元に近づいてきた。
え…
躊躇するかの様にゆっくりと、彼の唇が重なる。
ほんの一瞬の接吻だったが、その唇と唇からは確かに熱が伝わった。
ゆっくりと瞼を開き青の瞳と視線が交わる。
あれ…
レインの方が顔が真っ赤だ。
クスッ
愛おしい人は私につられて、恥ずかしそうに一緒に笑ってくれた。
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