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「なんと…‼︎」
「あの伝説は真であったか!」
その声を聞くだけで、紫雲の怒りが今にも俺の腹を突き破り、うるさい役人達の首を引きちぎろうとするビジョンが脳裏をよぎった。
ダメだ…堪えてくれ…!
「お鎮まり下さい!」
威厳と言うのだろうか、突然話だした師匠の言葉に反論する者は誰一人いなかった。
「……邸下、これにて失礼させて頂きます。」
王様は何も発せず、ただ頷いている。
「お待ち下さい‼︎」
この声はーー
ウォルに声をかけていた役人の1人だ。
「…伝説が本当ならば、その者はこの国に吉凶をもたらす者。国をも揺るがす事態になるやもしれませんぞ。
…いくら大将軍が身元を預かってたとしても、我々、議政府はこの状況を見逃す訳にはいきませんな。」
その言葉に場が静まり返った。
「では、この者を捕らえろと?」
サラリと師匠が言葉をかえした。
予測なく、即返答が返ってきた事に動揺は隠せないようだ。
その役人は返答に困ったのか黙りこんだ。
「皇龍寺に光が刺した1ヶ月半前ーー
皇宮でも神龍が降臨したと騒ぎになっておりましたね。高麗の未来を暗示すると。
この者はその皇龍寺の真下で発見されました。
そしてその寺は我がユ家一族、代々が御守りしてきた場所。さすれば自ずと、この者の神体は我々がお預かりするのが筋かと。」
「…!」
的を得た発言にいい返す台詞も出ないようだ。
俺はただその場で荒がる息を整える事に、気を集中させる。
今にも飛びかかりそうな紫雲の衝動が身体の中を今か今かとと巡っているのだ。
怒り…を鎮めるんだ。
大粒の汗がダラダラとこめかみから流れ出る。
フッ
「…何かを及ぼすと言うなれば、すでに高麗は滅びておるわな」
王様が鼻で笑いながら言った。
「話はもうよい。ウシクよ、その者の手当を急ぎせよ。」
「…邸下、失礼致します。」
師匠は俺を肩に担いだまま、
その場を足速にでた。
気をしっかり持てと、小さな声で話した。
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