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「…ユ家の関わり合いのあるとこだったんですね、俺が倒れていた場所は。」
「すまんな、隠してるつもりはなかった。」
支えてもらいながら、庭園の中の東屋の長椅子に腰をおろした。
さっきまでの息苦しさがだいぶ落ちついた。
左腕の激痛も徐々に鎮まっていく。
「其方が倒れていたあの場所は、代々先祖が御守りする様にと先々帝より賜った皇龍寺と言う寺院だ。
…だが、王権争いから脱する為に、身分を廃皇したが故、前王の命で近づく事すら出来なくなった。」
「……俺を連れてったのはワザとですか?」
「そうだ。随分前からウォルを参内させるように言われてはいたが拒み続けてきた。
だが、今回は皇后様のご容態が芳しくなく、内医院も手の施しようがない…と。王にはウォルを皇宮から救出した時の恩がある。
ウォルが誘拐され、其方が現れたあの日の夜。皇龍寺の真上に大きな雷光が、地上めがけて落ちたのを多くの人々が目撃した。
高麗の人間であればそれがどれ程のことかよくわかっているはずだ。
龍の恩恵を持つ其方がウォルの側についている事で、牽制の手をうつつもりであの場へ連れて行った。
レインよ、黙っていてすまなかった。」
「…」
少し沈黙している間に、左手は元の人間の腕に戻っていた。
「…皇后の容態が良くなるまでは、しばらく皇宮へ滞在しなければいけない。私は戻らねばならん。客室でゆっくり休め」
穏やかな風が庭園内の花を揺らしている。
それをぼんやりとみていた。
いろいろ接する中でも師匠程、信頼の置ける人はいないだろう。
ウォルの事も俺の事もよく考えての最善策だったんだろう。
紫雲が怒りを露わにしたのは、あの役人達の欲にまみれた心根がみえていたからだ。
決して存在を利用されたからではない。
「…紫雲」
「…」
「俺はどうしたらいい?」
「……其方がよくわかっているのであろう。我は疲れた、しばらく眠る。」
はぁ。
肝心な時に言ってはくれないんだな。
…でも腹の内はもう決めている。
ーーウォルが戻る前に部屋にもどらないと。
石段を歩きながら痺れが残る腕をさすった。
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