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第十章 それぞれの想い
「だいぶお顔の色が良くなってきましたね。」
皇宮に来て数日ーー
皇后様の体調もお会いした時より少しずつだが回復の兆しがみえてきた。
「其方のおかげだ、姫よ。」
「そんな事ございませんよ、今日の分のお薬湯をご用意してきますね。」
部屋付きの宮女に空気の入れ替えを指示して、
部屋を出た。
ふぅ。
今朝レインの部屋を訪ねた時には、すでに出かけた後だった。
しばらく師匠について公務や軍議に参加しているみたいで、今日も会えずにいた。
時間が空けば剣術や鍛錬に時間を使っているので、すれ違い状態。
「…今日はどこいったのかなぁ。」
皇后宮の庭園の石畳を歩きながら、ぼんやりとあの夜の事を思い出していた。
彼の金色の長いまつ毛の中からみえる青い瞳が、自分の瞳と交差しながら、吐息が触れそうな距離で唇と唇がーーー
きゃーー
言葉にできない恥ずかしさが込み上げて、顔を手で覆った。
「はぁ…」
人を好きになるって不思議。
あんなに勉強と本にしか興味なかった私が。
…会えないせいか、私の頭の中は彼ばかりを考えてしまう。
まだ借りていた玉を返しに行けてないし、村に戻ったら、また市場に一緒に出かけたいな。
「……レイン、今何をしてるんだろう。」
ハッ‼︎
「ダメダメ!仕事中!」
クスクス…
「!」
「失礼致しました、ハ・ユンソでございます。ご挨拶させて頂きたく参上致しました。」
目の前には王の勅令を持って来た軍人が立っている。
あの緋色の具軍服は内禁衛…
孔雀の羽根をつけた戦笠を被り、手には藤策を持っている。
「ご挨拶申し上げます。ユ・ウォルファです。」
位は高そう…と思いながら目線を下に頭を下げた。
「頭をお上げください!」
急に肩をつかまれた。
「⁈」
「…私を覚えてませぬか?」
「あ、あの…」
離宮に閉じ込めらていた時の記憶は途切れ途切れにしか覚えてない。
あの頃の私を知ってる人?
切長の男の瞳がやけに切なそうにみえた。
「……は、離してください!」
振り解こうと後退りしたが、がっちり両手で掴まれている為身動きが取れない。
その時ーーー
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