第十章 それぞれの想い

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「その手をお離し下さい。」 びくともしなかった男の手首を掴み挙げた、 レインがそこに立っていた。 「レイン!」 「貴様、護衛の分際で…!」 「ウォルに触れるな。」 「‼︎…私に斬られても文句は言えないぞ。」 腰に付けた刀の柄を握りしめ、今にも引き抜こうと身構えている。 「やめて下さい!」 ダメ! 咄嗟にレインを庇う様に前に飛び出した。 「‼︎」 「ウォル!」 「刀を収めなさい、レイン。 失礼致しました、ユンソ様。どうか、お許しください!」 レインの腕を無理やり引っ張って、庭園を急足で歩いた。 まだ心臓がバクバクしてる。 あの場を止めなければ、大事になっていた。 ーーー皇后宮からしばらく離れた場所に、典医監の薬草園が広がっている。 その場所までレインを引っ張った。 「ダメじゃない!相手は内禁衛よ、刀を抜いていたら怪我してたかもしれないのよ⁈」 「…ごめん。」 レインは複雑そうな顔をしている。 せっかく私を助けようとしてくれたのに、怒った挙句説教まで…私ってば…。 「…私こそ、ごめん。」 プッ 「久しぶりに聞いた。お説教」 私の反省を他所に、クスクスと笑いだした。 金糸の髪が陽に当たり、キラキラと輝いている。 あ… 私が好きな彼のはにかんだ笑顔。 「大丈夫だった?」 「あぁ、さっきの…。私を知ってるみたいだったけど、皇宮へいる時の記憶はほとんど覚えてないの。」 レインはふぅんと、言った後に何か考えているみたいだ。 久しぶりにみた彼の横顔。短かめの髪は上だけ結びあげ、黒地の絹の韓服を着ている。 「何?」 ドキッ 「あ…あの、服!似合ってるなーって」 赤面する顔を見られない様に横を向く。 「あのさ今日の夜、空いてる?」 「えっ⁈」 「今日城下で春の祭りをやってるみたいなんだ。一緒に行かないか?」 「行くッ!」 クスッ 「じゃあ決まりだね。」
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